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「人」のライフスタイル・気持ちの変化に

追従してアップデートできる住まいに

僕は比較的大きな建造物を手掛けてきましたが、十数年前にエアロハウスを設計したきっかけは、自邸をプランニングしたことです。そのときに、住宅としっかり向き合い、日本の住宅が約27年で解体されてしまっているということを知りました。
 解体の理由は老朽化などの物理的な変化ではなく、家族の増減などライフスタイルの変化によるものが大きいのではないかと感じました。例えば結婚し、子供ができると家族の
人数は増えますが、20年もするとまた夫婦2人になり、それがやがて1人になる。ところがこれまでの住宅は、その変化に追従することが難しかった。だから解体されるわけです。

リフォーム・増設・移設に対応した変化する住まい

 これをどう解決するか。これから10年で、長く住み続けることのできる家を考えるためには、いっそう「人」に追従する住まいである必要があるでしょう。
 つまり、竣工=完成ではなく、住む人のライフスタイルの変化に応じ、リフォームも増設も移設までも可能な、アップデートできる住まいを作ればいいのです。「イツマデモハウス・ドコデモハウス」という考え方が、今後は大切になってくると思います。
 そのためには、空間自体のサイズを容易に変えられる住宅はもちろんのこと、住んでいる人がアクティビティーとして住宅づくりに参加していけるようにすることも大切です。すると家が、〝与えられたもの〞ではなくなる。ファッションと同じように自分なりのアレンジができるようになると、住まいはアップデートされ続けます。例えばそれは、インテリアかもしれないし、ハイスペックな省エネエアコンやどんどんし進化する設備機器かもしれない。新しいものはどんどんでてくるので、そのアップデートは今後さらに加速するだろうと思います。
 さらに今後は日本人の、古着をうまく着こなす感覚が住宅にも入ってくるのではないかと思います。時代を超えたものを、アンティークとして取り入れることで、インテリアやデザインの豊かさはもちろん、住宅の持続可能性も高まると思います。古いものはさらに古く、新しいものはさらに新しく、という2つのものが同時に存在し住まいを形作っていけると理想ですね。

日本の「民家」スタイルがもう一度復活!?

 住まいの構造的な考え方としては、日本の「民家」スタイルがまた戻ってくるのではないかと思います。解体・移設ができる構造形式もそうですが、たくさん仕切られた部屋を目的別に使い分けるのではなく、ひとつの部屋をいかに活用していくかという考えが広がっていく気がしています。
 住まいは「住宅」というよりもアップデートできる生活の「プラットフォーム」になるといいと思います。
10年は自宅として使い、その後はギャラリーにしようという人がいていい。カフェにしてもいいし、地域のコミュニティスペースとして使ってもいい。ライフスタイルの変化もそうですが、時間の経過により人の心や気持ちも自然と変化するものです。日本の民家のような仕切りのないひとつの空間は、その時その時、自分に合った使い方で、自由に活用できる生活の「プラットフォーム」に最適です。

これまでも、これからも、住まいの役割は変わらない

 産業革命以前、住まいと職場は一緒でした。しかし、外で働くようになり、住まいとは「やすらぎの場」という役割をになうようになりました。快適に過ごすための耐震性、断熱性、耐久性、気密性など求められることは多々ありますが、根本として人が好む空間自体は、何年経っても大きく異なることはありません。住宅=リラックスできて、人が集まる場所だという役割は変わらないのです。その意味でも僕自身は木を使った建築にこだわり続けたいと思います。

 

 

村井 正

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