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スキップフロアの赤い家、まるでお店のような生活感をおさえた空間


 東急線の旗の台の商店街を抜け、住宅地の一角に新しい家が並ぶ。白い建売住宅、そしてその奥に1戸だけがベンガラ色のエアロハウスが建つ。

 施主の実家は地元の不動産会社で、地域に不動産を持っている。今回の物件の隣には、集合住宅があり、この1室がそのオフィスだ。

施主は隣接している部分を買えば、父の所有している集合住宅と地続きになり、将来的に活用の幅が広がると考えたのだ。付き合いのある信用金庫に話をしたら住宅ローンの審査が通り、このプロジェクトがスタートした。

 建売でも快適に住めると施主のM氏は考えたが、せっかくならおもしろい家にしたい、家っぽくなく店っぽいもの、と思いインターネット等で色々な情報を調べ、エアロハウスのサイトにたどりついたそうだ。

 一人で住む予定だったので、最初は本当に小さい家で良いと思い、エアロハウスTGを縦にした事例位の大きさでと考えた。しかし、延床面積が50㎡を超えないと住宅ローン控除が適用されず損かと思い、50㎡を超えるくらいでとプラン変更。最終的に57.68㎡に。

 設計した村井氏によると、途中、大きく変わったポイントがあるという。デザイン的にはあまり変わらないが、構造的な仕様が変わったのだ。

 当初は、住宅、事務所、店舗としていずれでも対応が可能なものにしたいと考え、単純に箱としてつくった。将来の用途が変わる可能性が高く、スケルトン仕様となったのだ。中2階のみ、総2階、スキップフロアなどなど、いくつものシミュレーションをした。

 エアロハスには、床の付け方が、可変性の容易なタイプとそうではないのがあり、容易なタイプは、値段が高くなる。また、施主が自分で変更できるよう2バイ材を使うものを想定し、将来的に知り合いの大工さんにリノベーションの注文することも可能なつくりだ。

 ところが、施主の住み方が決まり、固定型の床に変更し、スキップフロアの家になった。

生活のタテ動線という考え方だ。それは平屋をタテに伸ばしたようなイメージだ。

ところで、なぜ施主のMさんは最終的にエアロハウスを選ばれたのか。

「単純にかっこいいですし、比較的低コストに仕上げることも可能というところからです。柱がなく、空間が大きく使え、間仕切り壁などはいらないと思っていましたから。」

 さら建築当初は、将来的に賃貸に出そうかとも考え、エアロハウスのような物件は、賃貸市場にほとんど無く、希少性が高いのもポイントの1つ。

 家づくりでこだわった点は、1つは、照明のビンテージっぽいものだ。2つめは、トップライトで、予算が上がっても絶対に欲しかったと振り返る。

 そして、外壁の色だ。ベンガラ色という日本の伝統色でありながら、レンガのような風合いがある。村井氏からベンガラという色を提案があり、それに決まった。現在では、通称ポストハウスと言われるほど、目立った存在になっている。

 実際に住んでみて、良かった点としては、棚に物を並べる楽しみが増えたそうだ。写真集や壺など美術的要素の高いものが置かれている。

 また友人を招く機会が増えたという。珍しい住まいでの飲み会は、お店のような非日常をかもしだす。インテリアもこだわったものを取りそろえ、よりスタイリッシュな空間をつくっている。

​ 住み心地は大変良いが、あえて難点とするならば、1階のLDKに、吹き抜けがあるため冬は冷気が1階に降りてきて少し寒いそうだ。トップライトを設けたことに起因しているのだろう。

 一人で快適に暮らしている。完成後、間もないころは木の香りに包まれ、まるで森に住んでいるようで気持ち良さがあったという。スキップフロアにしたことで、土地面積からは想像できない開放感に満ちた住まいを施主のM氏は獲得したのだ。


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