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DIY好きな家族とともに、古い集落にたたずむエアロハウス

岐阜県揖斐川(いびがわ)町にあるエアロハウスを訪ねた。

そこは濃尾平野の一番奥にあたり、少し行けば高い山々が迫っている場所だ。揖斐川から一段高くなった古い集落にエアロハウスは溶け込んで建っている。外壁の黒い焼杉板が、伝統的なたたずまいを想起させる。



庭に向かって大きな窓があり、こちらの到着を見て、オーナーの I さんのご主人が出迎えてくれた。中に入ると、LDKの手前には大きな薪ストーブが鎮座する。向かい合わせにキッチンがあり、食器や調理器具が並べられている。床は木のフローリングだ。奥の居間に行くと床が畳になる。ちゃぶ台が置いてあって、大きな窓から庭の畑が見える。さらに襖越しに主寝室、北側には子供室が並ぶ。


I さん夫妻と小学校の娘さんの3人が暮らしている。



実は奥さんのN子さんが、結婚前からエアロハウスに注目していて、将来はエアロハウスで家を建てたいと考えていたそうだ。その想いが10年後に結実したのだ。当時は、エアロハウスの斬新さに衝撃を受けたという。


しかし、簡単には話が進まなかったようだ。


岐阜市に住んでいたころ、一度、エアロハウスの村井氏に新築相談のメッセージを送った。その際には、予算的な折り合いがつかなかったのだ。諦めなかったIさん夫妻は、その後、祖母が住んでいた空き家のある県内の大垣市に引っ越し、家賃分を新築資金に充てた。数年後、メドが立ったことから、いよいよエアロハウスの家づくりとなった。


いざ土地探しとなったが、大垣市では理想とする場所が簡単には見つからず、範囲を広げて揖斐川町も視野に入れたところ、現在の土地に巡りあったのだ。2017年に土地購入の契約を済ませた。


同年12月に、この地を訪ねた村井氏の最初の印象は、エリアが持つ神秘的な力だった。I さんの土地の近くには、古い大きな不思議な岩がいくつも転がっていた。また城跡があり、太古より人が暮らしてきた痕跡も残る。平野部と山間部の境界にあたり、人の暮らしぶりもここを境に変わってくる。


土地の西側には大きな山が望め、それが印象的だったと村井氏。この山を見ながらの暮らしをイメージしたという。

まず I さんが村井氏に要望したことは、「薪ストーブを絶対入れたい」「庭で畑をやりたい」「部屋は畳にしたい」ということだった。

また村井氏は、I さんの奥さんとの会話から、古民家など伝統工法に興味があることを知った。


村井氏から最初2案があがってきて、大胆な案とシンプルな案だった。大胆な案というのは、西側の山を大きく屋内に取り込んだもの。一方、シンプルな案は、全体のバランスを考慮した無難な案である。もちろん西側の山を見えるように高い場所に窓を大きめに設置している。


I さんは、シンプルなプランを選び、詳細をつめていった。

シンプルなプランであれば、住んでからのDIYがやりやすいとも考えたとN子さん。空間の世界観が完成し過ぎてしまうと、DIYする箇所が無くなってしまうからだ。かえってバランスを崩してしまいかねない。エアロハウスは、住人によって拡張しいくというコンセプトも、気に入った点であったのだ。


村井氏は、薪ストーブのあるフローリング部分を、古民家であれば土間をイメージしたという。床によってゾーニングがされていて、畳のエリアから居間になる。奥の寝室も畳で、襖を開けたら大広間になる。さらに部屋の仕切り壁は、天井で塞がず欄間のような隙間を置いている。まさに、伝統的な和の建築要素をモダンに再現している。



2018年に設計プランのやり取りが始まり、翌年2019年に工事がスタート。同年12月に完成した。


完成後、DIY好きのN子さんは、居間の壁を自身で塗った。赤いベンガラ色を事前に村井氏に勧められていたそうだ。プロ級の丁寧な仕上がりになっていた。またキッチン脇に植物を鉢に吊るし、さらに小さなキッチン棚を作成している。これもN子さんが自身で作った。



I さんは、引っ越してから、デザイン系の仕事から地元の森林組合に転職をした。これまでリモートワークを含め、一人での仕事が多かったが、これを機会に人との関わりや自然との関わりを重視したいと考え、転職に踏み切ったそうだ。地元への貢献と環境整備への貢献になり、新しい仕事にやりがいを感じているとIさん。


おかげで余った木材を無料でもらえ、薪ストーブに利用できる。そこで木材を干すための小屋が必要になり、それをN子さんが設計して作ってしまった。焼杉板のエアロハウスとよく似合う。



薪ストーブのおかげで、寒い冬でも快適に過ごせるそうだ。また家の断熱性能が高いので、昼間はストーブを必要としないという。


コンパクトな家でありながら、襖を開けると大広間になり、親戚が集まった際に、娘さんがいとこ同士で遊んだり、友達が遊びに来て遊べるような場所になったとIさん。N子さんは部屋の中にブランコを取り付けている。



I さんは、今後は庭に小屋を作りたいと思っている。ここでの暮らしを積極的に楽しんでいるようだ。


取材中、外から虫の声も聞こえ、のどかである。山が見え、鹿、さらにイノシシにキツネもここに出没するそうだ。自然と共に暮らしがあり、ゆったりとした時間の流れを感じる。

自然素材を多く使うエアロハウスは、そんな場所に良く似合う。



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