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カバンメーカーの新しいフェーズに、エアロハウスが寄り添う

岐阜県可児市にある工房利用のエアロハウスを訪ねた。


通り沿いに面し、玄関付近の尖った屋根が印象的なエアロハウスだ。これまでいろいろなエアロハウスを取材してきたが、かなり大きな部類に入るだろう。全部で285㎡あり、一部2階建てになっている。



用途は工房というモノづくりの場所であって、一切、ここでは販売をしていない。だから看板を出す必要もなく、通りを走る車からは、この大きな建物が何なのかがわからない。


玄関にあるインターホンを押すと、扉から工房長の宮島さんが顔をのぞかせる。中に案内され、奥に大きな機械が見えた。最新式の革の裁断機だという。こちらは、革カバン専門の工房で、岐阜県のレザーブランド「Lampi」である。


「もともと裁断機を新しく導入するにあたって、新しい工房を建てることにしたのです」と宮島さん。


同社は岐阜県の多治見市で店舗と工房を構えていた。イオンモールにも出店する規模の販売会社だったが、国内のカバンメーカーが減り、自社でも製造することにした。その責任者が宮島さんで、10年前にブランドを立ち上げている。


当初は自宅1階で製造してきたが、カバンの生産数を増やすためには、もっと大きい機械とそれを置ける大きな場所が必要だ。柱のいらない木造建築がいいなと思って探していたら、webサイトでエアロハウスのページにたどり着いた。


土地が決まったのが2017年で、この場所を選んだ理由は住んでいる人が近くにいないエリアだから。新しい裁断機が騒々しいという前情報があったことに由来する。地下鉄の駅構内と同じ騒音になるそうだ。


この工房では10人ぐらいのスタッフが働くという前提で、宮島さんは設計依頼をした。エアロハウスでは、ミシンのサイズから配置をシミュレーションしながら設計に落とし込んでいった。

裁断機の仕様がなかなか出てこなかったが、ある程度のサイズを想定して設計を進めた。まず建物の幅を10メートルにした。エアロハウスの幅は6メートルがマックスサイズだったが、研究が進み、ワイドスパンも可能になった時期だった。



2階には打ち合わせスペースを兼ねた休憩所があり、キッチンカウンターが奥にある。その横にはシャワー室もあるのがユニークだ。宮島さんによると「以前、カバンメーカーで修行していた際、草刈りを工房長が自ら行い、工房長が自宅に一旦帰りシャワーを浴びていました。この辺りも草刈りが必要ですから準備したのです」。現在も重宝していると宮島さん。



さらに2階は商品の撮影場所としての活用も考慮され、白い壁や木質の壁を大きく設けている。コンセントやスイッチが写り込まないように設置場所にも細かい配慮があるという。その頃すでに カバンのオンラインショップをしたいと考えていたからだ。



また商品の搬入口や搬出口を分けた動線を設け、より生産性を高められるよう工夫している。鞄の工場に詳しい人の意見も加えられ、設計に反映されたそうだ。



初期の設計では、階段を立方体である建物の内側に置いた。しかしその後、階段と玄関を外側に膨らませている。デザイン性というよりは、全体の機能を考慮して一番合理的な設計に変更したそうだ。しっかりここのスペースをとるべきだと村井氏は考えたのだ。一階と二階の行き来をスムーズにして、空間をワイドに。ロッカールームも必要、そんな流れから 玄関と階段は建物の外に押し出されたようだと村井氏は当時を振り返る。



2017年末には設計プランが固まり、翌年から施工が始まることに。


しかし、当初の予定より大きな建物面積になり、予算を抑える必要が出てきたそうだ。そこで、宮島さんは、基本的に間取りを変更せず、棚板を合板に変え数も減らし、塗装箇所を減らし、照明を減らし、さらに外構工事も無しとして、想定内の予算におさめられた。


2018年の11月に完成した。


その後、照明器具を自身で購入して宮島さんたちで設置したそうだ。また外構の代わりに通り沿いにハーブを植えていった。結果として雑草除去につながり、「綺麗に頑張ってるね」と近隣に言ってもらったそうだ。



翌2019年明けから、ここに引っ越し、実際に作業をしてみて、断熱性能の高さに感動したと宮島さんは言う。良い環境で作れるようになって、張り切って仕事に打ち込める。以前の多治見市の工房は、冬は寒くて屋内なのにコートが必要だった。


断裁機も使ったことがなかったので、色々自分たちで手探りとなった。作る工程も大幅に変えて1年ぐらいで慣れ、これからというタイミングでコロナ禍となった。休業の店舗もあったので、販売スタッフに一日数人ずつ密にならないよう新しい工房に見学に来てもらった。


採用についてコロナ禍でビジョンが変わり、製造に特化した人材より、販売も含めて「伝えたい」という気持ちがある人を採用しました。ミシン作業については、外部の協力会社が増え、内製化を急ぐ必要がなくなった。そのため、工房の利用方法も当初とは変わっていったと宮島さん。


今後は年に数回はオープンファクトリーを兼ねてワークショップを開催していきたいそうだ。2階の窓から見える景色は、美しい森や里山の田んぼが広がる。木の温もりのあるエアロハウスの工房で、自信を持って近隣の人や鞄のお客さんたちを招けると宮島さんは語る。



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